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『光も陰も愛』番外編《吉満明子という編集者のバトン①》


『光も陰も愛』番外編

この本の編集が終盤に差し掛かった春分の日、まだ寒さが残る夜のできごと。

本の編集にまつわるやり取りはいつも東京北千住だったが、この日、ふたりは長岡の魚吉という小料理店にいた。

最初は和気藹々と原稿の擦り合わせをしていたが、やがて少しずつ深い話になっていく。

一方の言葉で深くなり、そのまた一方の言葉でさらに深く奥にいく。哲学的な話にもなるし、スピリチュアル的な話にもなる。これは毎度のことで原稿の擦り合わせの最中、ふたりで何度も泣き合ったから決して特別な事ではない。

『あなたの心の中にある過去の傷と恐れに輪郭と名前をつけてほしい』

この言葉を聞いた瞬間、その場の空気がピンと張り詰めて固くなった。

僕はこの言葉に即答することができず、少し沈黙の時間が流れた。それは時間にして数秒だったと思うが、2人にとっての体感はものすごく長く、そして重い数秒だったように思う。

最初に原稿を提出したのは2024年10月末のこと。それ以降これまでの追加原稿依頼(宿題)はことごとく喜んで承ってきた。

その上で吉満明子もこの言葉を僕に伝えるのは相当勇気がいったのだろう。

絶対的な確信は持てなかったが、今までのやり取りを思い返せば、すぐにそれが想像できた。それはなぜか。今までにない難題で最終の爆弾宿題だったからだ。

『あなたの心の中にある過去の傷と恐れに輪郭と名前をつけてほしい』と言われた瞬間のは、少し怒りすら感じていた。

どこまで俺の心の中に土足で入ってくれば気が済むのか?

そもそも、それをすることに本当に意味や意義があるのか?

なぜここまでしないといけないのか?

もうこれ以上、俺の心を抉らないでもらいたい。

こんな想いがその数秒の間に頭と心を駆け巡る。

しかもそれを4行から5行で書いてほしいと言う。

無理に決まってる。

ピンと張り詰め固くなった空気をさらに追い討ちをかけるように僕は言った。

「それはよしみっちゃんのエゴですよね?」

「この原稿こそが答えです。これ以上何もありません。」

目の前にある束になったコピー用紙のゲラを右手で持ちながら眉間に皺を寄せた。
つづく、、、

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6月22日(日)
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